田口所長からのメッセージ
個人差はありますが、一般的にがんが進行し再発や転移を繰り返していくうちに、標準治療の効果が出にくくなります。それと同時に、体力の衰えなどQOL(生活の質)が著しく下がってもいきます。その時に、二者択一の選択になりがちです。すなわち、副作用を限界まで我慢して化学療法を続けるのか?それとも、積極的な治療はやめて、痛みや苦痛を取り除く緩和ケアだけを行うか?
しかし、人生最大とでも言うべき岐路において、二者択一しかないというのは、おかしいのではないかと私は思っています。医療だけに限らず、二者の『間』に存在する選択肢というものがあって然るべきでしょう。命を懸けた選択肢ならば、尚のこと。私は医師としてチャンスがあることは患者様に伝えなくてはいけない、でき得る限りの可能性は提示するべきだと思っています。「標準治療が効かなくなりました。だから今日からはもう、あなたには何も治療はできませんよ」と判断を下すのは大変酷な話です。患者様と話し合い、希望を伺いながら、患者様の次の決断のためのお手伝いをする。最終結論に至るまでに、いくつもある治療の分かれ道で、患者さんの水先案内人となるのが医師であり、それが、「あきらめないがん治療」ということだと思います。決してあきらめることなく、たじろぐこともなく、可能な範囲で先に進んでほしいと思います。